ここではよりよいカニの選び方を頭に入れておくことによって、おいしいカニを楽しんでいただきたいと思います。カニの持っているエキス分は、時間が経つと酵素の作用で有毒成分に替わってしまいます。そのため生の状態でカニを買うときは、必ず生きているものを買ってください。このとき実際に手で持って比べてみて、重量感を感じたものを選ぶとよいでしょう。ゆでてあるかにを選ぶ際に着目すべきは腹部です。くろずんでいないものが良品といえます。冷凍ものを選ぶ際には、冷凍前にカニがどのような鮮度であったかが重要ですので、甲面を触って見ましょう。さらりとしていれば新鮮なまま冷凍されているといえます。粘り気があるものは避けましょう。また、冷凍ものといっても匂いで判断することは可能で、アンモニア臭をかんじたらそのカニは避けるようにすれば間違いありません。
かに以外の甲殻類、節足類の生き物を見ますと、伊勢海老やザリガニ類も時には横に歩くことがありますが、ほぼ横歩きしかしないという点でカニは特殊です。ただし朝日ガニという原始的なカニは後ずさりしかできません。カニが横ばいをするようになった理由は、遊泳しながらすごす生活から海底を這う生活に移行していった進化の過程にあります。腹部と腹肢は遊泳に使われる部分であるので退化の一途を辿り、海底を歩くのに使われる胸の足、胸肢が発達し、それにともなって頭部も大型化していきます。腹部は小さく退化して胸の一部に折りたたまれます。この折りたたまれた腹部が、カニの甲羅をさばくときに最初に取り外す、「フンドシ」の部分なのです。それに対して頭胸部は左右に張り出して巨大に成長し、カニの姿が完成するわけです。この頭胸部にカニの脚はすべて密集しており、ハサミ脚のほかに歩行用の歩脚が4対、計10本の足があります。発達した頭胸部に足が密集した結果、前後に動かすと互いの足がぶつかって自由に動かせないという問題が起きます。そのため脚の位置をそのままにして屈伸するだけで出来る横移動に、移動方法をシフトしていったと考えられます。このように体の発達がある一定のレベルを超えると動作そのものが自然に変化するのは、陸上競技の走り高跳びがベリーロールから背面とびにシフトしたように、動物でも人間でも起こりうることだといえます。
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