ズワイガニはタラバガニと並んで有名なカニです。足が太く可食部が多く、ボリューム感とホクホクしたおいしさが魅力のタラバガニに対し、すらりとした脚にキメ細やかな身が詰まったズワイガニは、典雅で上品、まさに高級そのものといった味わいです。
ズワイガニの名産地として日本で知られているのが京都です。ズワイガニはオスとメスで別種のカニのように大きさが違い、オスのほうが格段に立派な偉容なので、京都ではズワイガニのオスを「松葉ガニ」や「間人(たいざ)ガニ」と呼び、殊に珍重しているのです。京都市内はもとより、名産地である丹後には、この松葉ガニを最高の技術で調理してくれる料亭が軒を連ねていますから、もしあなたが冬の京都にいらっしゃったら、絶対に松葉ガニ、間人ガニを召し上がっていただきたいですね。古刹の庭園を彩っていた紅葉もはらりはらりと散り、市街にやや愁いを帯びた冬の空気が降りだすころに、料亭の卓には紅葉の赤を受け継いだかのようなズワイガニが並ぶのです。なんとも風情があると思いませんか?
京都府立海洋センター海洋調査部、山崎淳氏によりますと、日本海西部のズワイガニ漁獲量は1970年には約14000トンであったのに対し、1980年代に2000トン未満まで減少し、枯渇の危機にひんしました。そこで1983年に京都府沖合いに保護区を設置し、その一帯のカニを取らないことで交尾、産卵するかにが網にかかるのを防ぎ、個体数の回復に努めました。また、カニ漁は2~3月と冬漁期にのみ漁が許されるのですが、春や秋の漁期にアカガレイ等を対象にした漁を行った際にズワイガニも混じって捕れてしまうため、1994年から特に混獲の多い水深220~350m域の漁を禁じました。このような努力の結果、京都府沖合いのズワイガニの数は回復してきています。さらに、隣接する兵庫県、福井県の漁業団体とも協定し、共に管理をしているとのことです。
このように、細心の注意を払って資源を守り続ける漁業従事者の努力によって、これからも京都を代表する伝統の味覚として、間人ガニは後世に伝えられていくのでしょう。その伝承の1ページに、実際にカニの味に舌鼓を打つ客としてあなたもぜひ参加していただきたいと思います。大量生産大量消費の外食産業とは全く違う、真の美食の世界、それははからずも環境保全の考えと相容れるということがお分かりいただけることと思います。
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