【セイコガニの主な産地とおいしい食べ方】
【セイコガニってどんなカニ?】
福井県の冬の味覚「越前ガニ」と双頭をなす影の主役、それが「セイコガニ」と呼ばれるメスのズワイガニです。
越前ガニが大きなもので全長1メートルに届くのに比べ、セイコガニは身体が小さく、越前ガニの半分以下。そのため、脚肉に豪快にかぶりつくと言った食べ方には向きません。
セイコガニのメインは、ぎっしりと身にまとった外子(受精卵)と内子(卵巣)の味わいです。こればかりは越前ガニが逆立ちしてもかなわない、蟹好きのための珍味です。
【セイコガニの主な産地】
セイコガニの生息地は福井県沖の深海域。越前ガニが水深300メートル以上の位置に生息するのに対して、セイコガニはやや浅い水深230〜250メートル付近を生息域とします。
セイコガニは越前ガニよりも漁期が短く、11月6日の解禁から1月半ばまでが漁期となります。2月には腹に抱えた外子を放出してしまいます。
【海の宝石箱と讃えられた珍味!セイコガニのおいしい食べ方】
先ほども述べましたが、セイコガニの味わいは外子と内子がメインです。とはいえ、決して身の味が悪いわけではありません。ズワイガニと比べて身体が小ぶりなので、身の量そのものは少ないのですが、旨味が詰まった脚肉の味わいは濃厚で、蟹の甘みが存分に楽しめます。「蟹を食べると無口になる」と言いますが、美味しい脚肉をほじくり出して無心に口に運ぶ歓びは、越前ガニよりもむしろセイコガニにこそ強く感じられるものかもしれません。
さて、外子と内子のおいしい食べ方のなかでも、一際ゴージャスな方法をご紹介しましょう。芥川賞作家であり美食家としても有名だった開高健が「海の宝石箱」と表現した、セイコガニの丼です。
身をほぐして白米の上にのせ、更に外子をこそげてのせ、内子も余さずのせ、この3種を惜しげも無く丼の上で混ぜ合わせます。そこに蟹味噌をスープ状にしたものを注ぎ込んだら完成となります。身・外子・内子・蟹味噌と、セイコガニの味わいすべてが渾然一体となった味わいは、まさに蟹全てをまるごと味わうという至福の体験となります。
また、郷土料理として有名なのが「せいげ」。こちらもセイコガニをまるまるほぐし、たっぷりの大根おろしと共に味噌で煮るというシンプルな料理です。セイコガニのエキスを隅々まで吸い込んだ大根おろしは、そのまま食べても、ご飯にかけても絶品。
一見小さなセイコガニですが、身体の内側に秘めた味わいの奥深さは他の蟹とは比べ物になりません。何も大きな脚肉をほおばるだけが蟹の楽しみではないとしみじみ実感させてくれるセイコガニは、普通の蟹は食べ飽きたというグルメな方にこそ味わっていただきたい蟹の「裏番長」です。
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